- 査察・監査対応
医薬品規制当局の、データへの期待に応えるための3つの鍵


医薬品規制当局は医薬品会社のデータ管理の実情をかつてないほど厳しく精査しています。 その好例: 米国食品医薬品局(FDA)は昨年度、パンデミックのため立入検査数が全体的に減少したにもかかわらず、デジタルシステムとデータの管理の不十分さを理由に、記録的な数(57通)のフォーム483(査察時の指摘事項を記載した文書)を複数の医薬品会社に提示しました。*¹ また、データに関連したフォーム483が増加したこととは別に、FDAは臨床医療機関のデータインテグリティの問題に焦点を当て、(契約調査機関が既に実施した)いくつかの研究を再実施するよう要求するまでに至っています。*²
データインテグリティがより重視されてきている理由
品産業に携わる人々はデータインテグリティに関連した処分件数の増加を意外なことと受け止めるべきではありません。こうした処分件数の急増に寄与した要因を理解するため、最近のDeloitte社の研究で引用されているような、FDAの警告状の契機となる4つの最も一般的なデータの瑕疵に特に注目してください。
- データが完全かつ正確に作製されていないこと
- 重大な逸脱が調査されていないこと
- 事象の発生と同時にデータが記録されてはいないこと
- 充分なアクセスコントロールが行われていないこと*³
これらの瑕疵が医薬品産業全体に引き続き拡がってゆくにつれて、FDAおよび世界各地の医薬品規制当局は、データ管理に係わるものとして彼らが認識した問題をより優先順位が高いものとして引き続き追求していくでしょう。最近の傾向から見えるのは、FDAが検査部門の機器のデータと製造バッチのデジタル記録のデータの正確性をより深く積極的に精査されることになるでしょう。*⁴
品質データの信頼性を向上させる
品質データは医薬品産業におけるコンプライアンスを表す指標となり、継続的な改善を進め前向きの品質管理を達成するための主要なメカニズムともなります。但し、高い業績目標を達成するためには、データに容易にアクセスできるとともに、データが状況を正しく説明できるものになっていなければなりません。結局のところ、品質管理に際して医薬品会社が依存するシステム、プロセスおよび人材の有効性は、会社に提供されるデータの有用性で決まります。言い換えれば、正確なデータのみが意味のある結果をもたらすのです。
Accenture Life Sciences社のR&D部門のSenior ManagerであるNeil Fauszは、「コンプライアンスが単に注目されるだけではなく実現される環境を達成するため、医薬品会社はデータファブリックを構築し、究極的なデータ価値を実現できる“データ中心の企業文化”を創りあげなければなりません」といい、「それは、企業のデータならびに想定しうる品質をエンドツーエンドプロセスに組み込むためにこうしたデータを活用する方法を構築し理解することを意味します」と述べています。*⁵
Fauszは、“データはそれが接続され、情報として役立ち、行動に結びつくものでなければ意味がない”ことを的確に指摘しています。データが行動に結びつく可能性をより高めるために、医薬品会社は、データの活用能力を高めて品質とコンプライアンスに関する目標を達成することに繋がる“3つの基本的なステップ”を実行することができます。
データの相互運用性(Interoperability)を実現するための3つのステップ ステップ 1: 品質データを基礎とする
どんな取り組みにおいても、会社全体にわたって適用可能な最初のステップは、同じ意見を社員間で確実に共有させることです。ネイティブに接続されたアーキテクチャー内のデータを統合することで、医薬品会社は品質プロセスと他のプロセスの間のギャップを埋めることができます。データを繋ぐ、統合されたプラットフォームの構成は、医薬品会社で発生しがちな、(R&Dチームと品質管理チームの間でしばしば発生する断絶の様な)“データを孤立させるサイロ”を破壊するでしょう。また、品質データが会社のシステムによってトレーニングプロセスに統合されている場合、現行プロセスや最新の情報との適合性を保ち、各社員がそれらを継続的に遵守してゆくことがより容易になるでしょう。デジタル的に連結された品質データをアンカーとして構築した医薬品会社の取り組みは報われています(Accenture社の調査によると、デジタル化されたデータ管理を行っているライフサイエンス企業の70%が、期待された事業価値を実現したかそれを越えるものを達成している)。*⁶
ステップ 2: 非効率なプロセスとエラーが生じやすいプロセスを特定する
医薬品会社はどこも品質プロセスを有していますが、それをより効率化することが恐らく可能でしょう。医薬品会社のデータ管理能力を改善することは、ミスに迅速に対応することとミス再発の可能性を著しく減らすのに役立つでしょう。データ管理能力の改善にあたり、まず会社の品質データの連結性を改善する機会を特定し、次に最適化が最も必要とされる領域を優先します。
ステップ 3: 専用ツールを用いて様式化された構成を構築する
手作業によるデータ管理業務は非効率なだけでなく、医薬品会社の重要な事業情報/事業プロセスにエラーが入り込む主要な原因となります。この場合、文書化業務の自動化が答になります。McKinsey & Companyが引用する複数の実証研究によれば、自動化に関連する最も説得力がある主張は、文書化業務が人手で行われる際の正確性が91%にしかならないことです。*⁷ 現代の品質管理用ソフトウエアソリューションは文書化における人為的エラーを無くすよう特にデザインされる一方、品質担当者が正確かつ最新のデータを管理、報告及び分析する能力をより高めるものになっています。有効とされるソリューションは文書化のプロセスをデジタル化して医薬品会社がより良い決定をより迅速に行うのを支援するのみならず、事業運営の際の効率と柔軟性を大幅に改善することも可能にします。
品質データの管理方法を最適化することができるデジタルツールについてさらに知りたい方は、品質管理に関するMasterControl社のソリューションのページを閲覧してください。
参照
- “FDA FY2020 Drug Inspection Observations and Trends,” by Barbara Unger, Pharmaceutical Online, Dec. 9, 2020.
- “FDA tells drug makers to redo studies run by two contract research firms due to data integrity issues,” by Ed Silverman, STAT+, Sept. 28, 2021.
- “Under the Spotlight: Data Integrity in Life Sciences,” Deloitte LLP, 2017.
- Supra note 1.
- “Today’s Digital Agenda: Intelligent Quality to Transcend Compliance,” by Neil Fausz, Accenture Life Sciences blog, Aug. 12, 2021.
- “Controlling Quality by Managing Data,” by Barry Heavy, Accenture Life Sciences blog, Dec. 7, 2020.
- “Operations can launch the next blockbuster in pharma,” by Ulf Schrader, McKinsey & Company Insights, Feb. 16, 2021.
